追憶の雨の中

追憶の雨の中

P1120635.jpg泣いてる空に、今も浮かび出す年明けの冷たい雨の日に彼はやってきた。 
10年ぶりだろうか、彼がクリニックを訪れたのは静岡学園サッカー部に入学が決まった時だった。寮に入る前に歯をやってくれということだったよ。

静岡学園はJリーガーを大量に輩出している言わずと知れたサッカーの名門高校だ。キング・カズの母校と言えばわかるだろう。
彼、S君はガキンチョの頃からのクライアントで湘南台で一番サッカーの上手いと言われた男の子だったんだ。  

そんなS君が10年ぶりにやってきたんだ。 はじめはあまりに、イメージが違っちゃってて認識できなかった。
 「おー、Sくんか? わかんなかったよ、今、なにやってんの?」 
『しつこく、サッカーやってます、これしかないんで・・』  
「えっつ、プロなの?」 『鹿児島のチームで飯喰わせてもらってます』
 「すごいな、プロになるって夢叶えたんだね、かなり嬉しいな、というより、S、おまえカッコイイナ!ポジションどこ?」 
『ポジションはトップ下です』 
「あー本田圭佑みたいなもんか」 
『いやいや、本田さんとはレヴェルハンパじゃなく違いますよ、まだまだ足りないです』 
 まあそんな感じで、なかなか治療に入れない(^_^;)
今はオフなので実家に帰ってきているという。それで歯をなんとかしてくれと・・なimage-1.jpegんだ10年前と同じかよ。(^_^)
  
実に気持ちがいいんだ、Sくんと話しているとね。 
すんなりと行かなかったらしい。サッカー人生。
怪我に泣かされた、絶望と失望その向こうに何があるのかもわからず、なにも見えなかった。無心で準備だけは、していたいう。
さすがは、かつての静学の10番だ。そして26才の今も、サッカーで飯喰ってる! 
なんて格好いいんだ。 サッカーに絞りきれるところが、オイラの心を射抜く。できないよ、なかなか。

夕焼けを追いかけてゆく列車の窓の中で、街灯りの揺れる景色を見つめているオイラが居る。
ふとそimage-2.jpegんな昔のことが脳裏に咲いた。  
ひとり旅をしたときのことだ。
風のように過ぎゆく季節の中で求め続けた。
いや、いまでも求め続けている。 
オイラが描いた憧れに負けたくはないから・・。

なんでだろう、あの時の場面がその時、鮮明にフラシュバックしてyjimage-2.jpegきたよ。
 いきなりガツンとやられたさ。 

 擦り切れたジーンズに洗いざらしのスニーカー、着古した皮ジャン・・・・こんな言葉から導かれる色あせていない気持ちをオイラは思い出にしてしまっている。 
 
あの頃、高校生の頃、オイラは自分に何度も問いかけてきた、
「何ができるのか、追い続けているこの憧れはどこにあるのか」 ・・と。 目を閉じて、見つめればここにあるのに、なのにつかめていないじゃあないか。
 
yjimage.jpeg現在日経新聞の「私の履歴書」に指揮者のオザワ セイジが執筆している。この記事もオイラを捉えた。
              桐朋短大の卒業式の日(芸大出身だと思っていたよ)、なぜかオザワセイジの名前だけ呼ばれなかった。あるはずの卒業証書もない。留年していたのだ。しかも誰も教えてくれなかった。かわいそうに、張り切って着物まで着たオフクロさんは泣きながら帰ってしまたそうだ。セイジは謝恩会の幹事まで引き受けていたとうのに。声楽の伊藤先生が「いいんだ卒業なんてなくても」と慰めてくれたが、学費はどうするんだ。またアルバイトしなくてはいけない。海外留学も後輩が選ばれオザワは羽田で見送った。
 
yjimage-3.jpegただわけもなく ただ時間だけが過ぎていく。絶望と希望の繰り返し。
しかし、二人とも形はちがうものの、掴んだ。
オイラだって置いてきぼりはイヤだぜ。
まだ、なにひとつ掴んじゃあいないんだ。ひとつもだ!
Sくんの目を見てハッキリとわかったよ。
 もっと遠くへ遠くへ遠くへ

Sくんに写真をお願いすると、もちろんス! じゃあ僕のiPhoneでもyjimage-1.jpeg一枚お願いできますかとさ!
 
 シャッターを押したミカが、いい感じで撮れましたと最高の笑顔を見せていた。
 追憶の雨の中で、脊髄が直線的に充電されていく。

「追憶の雨の中」へのコメント

10年ぶりに尋ねてきた 昔のサッカー少年 今は鹿児島でプロチームに在籍しているS君 
そして 日経新聞の『私の履歴書』に執筆している 小澤征爾氏いわずと知れた世界的指揮者。
二人は、多難な苦労を背負っても 決して夢を 追っかける事を諦めず実現している人物。
師匠は 『高校時代に追い続けていた憧れは 何もなにひとつ掴んじゃあいないんだ』 と 言われているが。
目の前のS君から 強烈な充電を受け 
もと遠くに遠くにではあるだろうが 
憧れていた物は 確かに存在している確信を得て
前進再開の2014年になった。 
偶然ではなく 努力をしている人の前には 背中を押す 勇気を与えてくれる物が 出てくる。
師匠も未だ人生の半分しか生きていない 周りには 素晴らしい友人 両親 兄弟が一杯居る。 
少しだけ歩幅を大きくして 進んでみてください。
冬や休みに 成功体験をした オイラ達の師匠。
オイラも 師匠の行動をいつもブログで知り、
自分を叱咤激励し前向き前進の思考に変わってきている事の多いのに感謝しています。
最近 このブログの掲載時刻が翌日になっているのに
少し心配。 ガリレオで天体観測している 至福の時の為なら安心なのですが。

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カテゴリー:院長ブログ  投稿日:2014年1月12日

         

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